接近評価
接近評価 (Conjunction Assessment, CA) とは、稼働中のペイロード、放棄された宇宙機、ロケット本体、デブリ、未知の物体を含む、2つの常駐宇宙物体 (RSO) の接近を特定するプロセスのことを言います。接近評価のプロセスには、RSOカタログの生成、カタログのスクリーニング、衝突リスクの評価が含まれます。重大な接近事象が見つかると、接近データメッセージ (CDM) が生成され、関連する所有者およびオペレーター (O/O) に共有されます。
接近評価のプロセス
RSOカタログの生成と状態推定
接近評価のプロセスは、RSOカタログの生成から始まります。RSOカタログは、米国**宇宙監視ネットワーク (SSN)による衛星のトラッキングをもとに算出される、各RSOの状態推定値をベースに作られます。この状態推定値をもとにSatcatが軌道決定 (OD)**を行い、RSOの現在の状態推定と不確実性の推定をします。そして、軌道決定で算出した状態推定値と共分散行列をベースに軌道伝搬を行い、接近リスクの評価を行います。
GNSS衛星の運用を行うオペレーターは、高精度の軌道暦を生成することができます。生成した軌道暦は、SSNのカタログと別に、または並行して、より高精度な接近評価を行うことができます。
一部のカタログは、SGP4伝播を用いた分析を行ったデータで構成されています。SGP4は一般的な状況把握には十分ですが、接近評価に用いるには精度が低めです。
RSOカタログのスクリーニング
カタログスクリーニングとは、プライマリRSOの予測軌道を、カタログに登録されている他RSOの軌道と比較するプロセスのことです。スクリーニングは以下のような状況で行われます:
- 軌道上での接近事象が発生した場合 (例: 稼働中のペイロードとデブリの接近)
- 衛星の打ち上げ時の軌道のスクリーニング (例: 打ち上げ機 vs. 軌道上の衛星)
スクリーニングを行うと、物体間で発生しうる全ての接近事象が予測されます。Satcatでは、予測された各接近事象について、以下のような数値を計算します。
- 最接近時刻 (TCA)
- 最接近距離 (MD) を相対座標で表したベクトル
- 衝突確率 (Pc) メトリクス (予測されるリスクを定量化)
18th SDSによるスクリーニングは通常8時間ごとに行われますが、接近リスクが高いイベントやマヌーバ計画中の際は、より高い頻度でスクリーニングが行われます。
- プライマリ: 評価対象のオペレーターが所有する、軌道上にあるもの、またはこれから打ち上げられる衛星のこと
- セカンダリ: プライマリに対してスクリーニングされる他のすべての物体のこと
Conjunction Reports (接近事象レポート)
接近とは、プライマリ物体とセカンダリ物体との間の予測される最接近距離が、事前に定義されたスクリーニングのしきい値を下回る事象のことを指します。各接近事象は、物体の状態情報と不確実性、最接近時刻(TCA)、相対ジオメトリ、および関連するリスク指標とともに記録されます。
衝突リスクに関連する主な数値
- ノミナル最接近距離: 不確実性がないと仮定した場合の、軌道間の最近接点。
- 衝突確率: 測定の不確実性と物体のサイズを用いて計算される。
- マハラノビス距離: ジオメトリが不確実性とどの程度一致するかを示す統計的尺度で、Pcの希釈を評価するために使用される。
軌道予測は時間とともに劣化するため、これらの数値は定期的に更新されます。
Satcatによる接近事象への対処方法や、運用上の意思決定をサポートについての詳細は、以下のページを参照してください。