衝突回避
衝突回避 (COLA) とは、接近リスクの高い接近事象に対して衝突回避マヌーバの計画・実行をして、衝突リスクを低減する手段のことです。軌道制御機能を持つ物体のみがこのプロセスに参加できます。従来の衝突回避では、宇宙船の速度をほぼ一瞬で変える、衝撃マヌーバが中心でしたが、最近のLEOでは、非推進型の宇宙機同士でも、微小空気抵抗(differential drag)を利用して衝突リスクを下げる手法が用いられた例があります。
衝突回避を行う目的は、衛星ミッションへの影響を最小限にとどめつつ、衝突確率 (Pc) を許容できるしきい値以下に抑えることです。そのためには、正確な軌道暦や接近リスクの評価に加え、影響を受けるオペレーターとの調整といったことを、信頼性の高いデータに基づいてタイムリーに行うことが大切になります。
衝突回避における重要な要素
衝突回避マヌーバ(CAM)とは、最接近点を対象とし、軌道を調整して効率的な方向へスラストすることで衝突リスクを低減する手段のことです。オペレーターは、評価された衝突リスクとあわせて、燃料の制約や、衛星ミッションのタイミング、マヌーバ実施可能な時間枠などを総合的に考える必要があります。
効果的な衝突回避を行うためには、次のような要件が大切になります:
- 両方のRSOに対する高精度の軌道暦
- 信頼性の高い衝突確率(Pc)の推定と不確実性の評価
- 相手オペレーターの意図またはマヌーバの方針の把握
- 可否(Go/No Go)判定を下す際の内部での権限
Satcat Operationsでは、衝突回避の計画をサポートするために、以下のような機能を提供しています:
- マヌーバを行えるトレードスペースの候補の自動生成
- リスク指標とPcトレンドを可視化したもの
- 運用軌道暦のアップロードと軌道暦の精度を検証するためのツール
- オペレーター間で直接連携をとるためのインターフェース
SatcatとSSCガイドライン
Satcat Operationsでは、Space Safety Coalition (SSC) が推奨する「宇宙運用の持続可能性に関するベストプラクティス」に基づいて、状況に応じてオペレーターへマヌーバの実施を推奨しています。SSCのベストプラクティスでは、以下のようなことが推奨されています:
- オペレーター間での調整を行わず、双方が同時にマヌーバを実施することを避けること
- オペレーターのみならず、当事者同士で協力して、他衛星や宇宙環境へのリスクを最小限に抑えること
SSCのベストプラクティスは、Satcatが独自に定めた安全な衛星運用におけるルールプロトコルを通じて実装されています。このプロトコルに従って、マヌーバの責任を割り当て、該当するオペレーターに双方の意向を通知します。
自律的な衝突回避
一部のオペレーターは、オペレーター同士の連携なしでマヌーバを実行するために、宇宙機上または地上で自動的にマヌーバを行う自動化システムを活用しています。このシステムは、Pcまたは最接近距離のしきい値に基づいて作られており、条件を満たすと衝撃マヌーバや弱いスラストでのマヌーバを自動的に実行する仕組みとなっています。
Satcatでは、この運用モードを使用する組織へ以下のような形でサポートしています:
- オペレーターが「自動マヌーバ」の責任ステータスを申告できる機能
- 調整時に、自動化システムを使用していることを他の関係者へ表示する機能
- 自動マヌーバシステムに対応したAPIとスクリーニングサービスの提供
ただし、自律的な衝突マヌーバが備わっていたとしても、意図せず他のオペレーターのマヌーバ計画と被らないように、SSCのベストプラクティスに従って運用することが大切です。
マヌーバの割り当てや他オペレーターへの衝突回避の意図の通知、オペレーター間の連携に関する詳細については、以下のページを参照してください: