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Pcの希薄領域

不確実性の大きい接近事象では、ノミナル軌道での衝突確率(Pc)が実際の接近リスクを過小評価する可能性があります。この現象は、片方または両方の物体の共分散が大きいために、幾何的には接近しているにもかかわらず、計算上のPcが小さく見積もられてしまう時に発生します。Satcatはこのような事象を検出し、最悪のケースの発生確率を計算するために、共分散をスケーリングして算出した追加座標「最大Pc(Maximum Pc)」を表示します。

警告

このような現象が発生した場合、オペレーターは代替の指標として、最大Pcを用いて、追加のセンサの割り当てを行うなど、大きな共分散を解消するための対策を検討する必要があります。

Pcの希薄領域とは

Pcの希薄領域は、接近評価において、幾何学的には衝突確率が高いことを示唆しているにもかかわらず、共分散の大きさが増すにつれてノミナルPc値が減少する範囲を指します。

  • 希薄領域は、軌道の共分散が最接近距離の大きさに比べて大きくなった時に生じます。通常、共分散が十分小さい場合には、最接近距離における確率密度は、共分散行列の増加に伴い増大し、Pcも増加します。しかし、共分散の大きさがある一定の値を超えると(希薄領域に入ると)、最接近位置での確率密度が低下し、Pcも小さくなります。

  • Satcatでの最大Pcの算出は、共分散のアスペクト比と最接近距離は保持したまま、共分散を縮小し、追加の追跡データが得られた場合に想定される最大のPcを計算する、という考え方に基づいています。最大Pcは、共分散が徐々に縮小していき、Pcがピークに達した値で決められます。

指標と症状

  • 症状:最接近値が小さい場合や幾何学的に接近しているように見える場合でも、Pc値が低いままになる。
  • 指標:マハラノビス距離は低い(すなわち、状態平均が近くにあるように見える)が、不確実性が大きい。この不一致は希釈の兆候を示します。
  • 希薄フラグ:Satcatは、Pcが希釈領域に入った場合、フラグをつけて表示します。

Satcatでは、共分散を縮小しつつ、形状と最接近時の相対ベクトルは変えずに最大Pcを計算します。その結果得られる衝突確率の曲線のピークが最大Pcの値となり、追跡精度が向上した場合に想定される最も高い衝突確率の推定値を提供します。

運用上の文脈

Satcatは、共分散が過大であるためにPcが衝突の可能性を過小評価してしまう「希薄領域イベント」を自動的に識別することができます。最大Pcは以下のように活用できます。

  • 最大Pcがしきい値(例:1e-4)を超える接近事象の場合、それは追跡対象とみなして対策を検討する必要があります。
  • 最大Pcがしきい値を下回る接近事象の場合、追跡データの更新によって再評価が必要とならない限り、その接近事象は安全とみなすことができます。
備考

希薄領域のような現象が起きた場合、オペレーターはより精密な軌道歴をアップロードしたり、タスキングを要求したりすることで対応することができます。タスキングは、セカンダリ物体が追跡精度の低い物体だった場合に効果的な対処方法です。

参考文献