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Satcatで使えるファイル形式

宇宙データシステム諮問委員会 (Consultative Committee for Space Data Systems、CCSDS) は、各国の宇宙機関により設立された、宇宙飛行に関わる通信・データシステムの標準を検討する国際標準化検討委員会です。CCSDS推奨規格文書 (通称「ブルーブック」) は、常駐宇宙物体 (Resident Space Objects、RSO) など、宇宙物体の接近情報を記述する際のファイルフォーマットを含む、特定のプロトコルやインターフェースを定義した文書です。

CCSDSブルーブック(英語版)の詳細はこちら


接近事象と関連したファイル形式

接近データメッセージ(CDM)

接近データメッセージ (接近通知、CDM) は、オペレーターが運用する衛星と他のRSOとの間の接近リスクが特定されたときにオペレーターへ送信されます。CDMは、オペレーターが回避策を講じることによって解決されるか、イベントのTCAが経過するまで、Space-Track.orgやその他の宇宙センサーネットワークのデータプロバイダーが送信し続けます。

CDMはKey=Value Notation (KVN) ファイルを使用して定義されますが、Kayhan SpaceのプロダクトではJSON形式のKVNファイルでのCDMアップロードも可能です。

CDMフォーマットの例
CONSTELLATION = Kayhan Space Corp
CDM_ID = 5XXXXXXXX
INSERT_EPOCH = 2023-01-01T00:00:00
CCSDS_CDM_VERS = 1.0
CREATION_DATE = 2023-01-01T00:00:00.000000
ORIGINATOR = CSpOC
...

文書番号 CCSDS 508.0-B-1 **Conjunction Data Message(接近データメッセージ(CDM))**のダウンロードはこちらから

運用CDMレポート

Satcat Operationsは、運用者のデータに基づいて追加のCDMを生成します。この運用CDMレポートは、第三者のCDMと同じファイル形式に従って生成されます。衛星所有者/オペレーターの軌道暦をアップロードするオペレーターは、CDMレポートを参照することで、自分のデータが接近時のジオメトリとリスク評価にどのように影響するかを即座に確認することができます。また、必要に応じて、CDMレポートをダウンロードまたは共有することができます。

Satcatの運用データの詳細はこちらから


軌道データメッセージ

軌道を記述するファイルフォーマットは、CCSDSが刊行した、軌道データメッセージ (Orbit Data Messages、ODM) ブルーブックによって定義されています。これらのデータフォーマットには、状態ベクトル、ケプラー要素、平均要素、および加速度や共分散の有無を含む、軌道全体に関連するパラメータの定義が含まれています。

各ODMファイルフォーマットには、ODMのバージョン、作成日、その他の重要なデータを記述するメタデータのセクションも含まれています。各フォーマットの詳しい説明については、ODMブルーブックを参照してください。

CCSDS 502.0-B-3 ODMブルーブックのダウンロードはこちらから

軌道パラメータメッセージ (OPM)

OPMファイルフォーマットは、以下のいずれかのデータを伝達するために使用されます:

  • 状態ベクトル (必須)
  • 宇宙機に関連したパラメータ (軌道制御が含まれる場合は必須)
  • 接触ケプラー軌道要素
  • 軌道制御に関するパラメータ
  • 位置速度の共分散行列
  • ユーザー定義パラメータ
OPMフォーマットの例
CCSDS_OPM_VERS      = 3.0
CREATION_DATE = 2022-11-06T09:23:57
ORIGINATOR = JAXA

COMMENT GEOCENTRIC, CARTESIAN, EARTH FIXED
OBJECT_NAME = OSPREY 5
OBJECT_ID = 1998-999A
CENTER_NAME = EARTH
REF_FRAME = ITRF2000
TIME_SYSTEM = UTC

EPOCH = 2022-12-18T14:28:15.1172
X = 6503.514000
Y = 1239.647000
Z = -717.490000
X_DOT = -0.873160
Y_DOT = 8.740420
Z_DOT = -4.191076
MASS = 3000.000000
SOLAR_RAD_AREA = 18.770000
SOLAR_RAD_COEFF = 1.000000
DRAG_AREA = 18.770000
DRAG_COEFF = 2.500000

平均軌道要素メッセージ (OMM)

OMMファイル形式は、以下のいずれかのデータを伝達するために使用されます:

  • 平均ケプラー軌道要素 (必須)
  • 宇宙機に関するパラメータ
  • TLEに関するパラメータ
  • 位置速度の共分散行列
  • ユーザー定義パラメータ
OMMの例
CCSDS_OMM_VERS              = 2.0
CREATION_DATE = 2007-06-05T16:00:00
ORIGINATOR = NOAA/USA

OBJECT_NAME = GOES 9
OBJECT_ID = 1995-025A
CENTER_NAME = EARTH
REF_FRAME = TEME
TIME_SYSTEM = UTC
MEAN_ELEMENT_THEORY = SGP/SGP4

EPOCH = 2007-06-04T10:34:41.4264
MEAN_MOTION = 1.00273272
ECCENTRICITY = 0.0005013
INCLINATION = 3.0539
RA_OF_ASC_NODE = 81.7939
ARG_OF_PERICENTER = 249.2363
MEAN_ANOMALY = 150.1602
GM = 398600.8
EPHEMERIS_TYPE = 0
CLASSIFICATION_TYPE = U
NORAD_CAT_ID = 23581
ELEMENT_SET_NO = 0925
REV_AT_EPOCH = 4316
BSTAR = 0.0001
MEAN_MOTION_DOT = -0.00000113
MEAN_MOTION_DDOT = 0.0

COV_REF_FRAME = TEME
CX_X = 3.331349476038534e-04
CY_X = 4.618927349220216e-04
CY_Y = 6.782421679971363e-04
CZ_X = -3.070007847730449e-04
CZ_Y = -4.221234189514228e-04
CZ_Z = 3.231931992380369e-04
CX_DOT_X = -3.349365033922630e-07
CX_DOT_Y = -4.686084221046758e-07
CX_DOT_Z = 2.484949578400095e-07
CX_DOT_X_DOT = 4.296022805587290e-10
CY_DOT_X = -2.211832501084875e-07
CY_DOT_Y = -2.864186892102733e-07
CY_DOT_Z = 1.798098699846038e-07
CY_DOT_X_DOT = 2.608899201686016e-10
CY_DOT_Y_DOT = 1.767514756338532e-10
CZ_DOT_X = -3.041346050686871e-07
CZ_DOT_Y = -4.989496988610662e-07
CZ_DOT_Z = 3.540310904497689e-07
CZ_DOT_X_DOT = 1.869263192954590e-10
CZ_DOT_Y_DOT = 1.008862586240695e-10
CZ_DOT_Z_DOT = 6.224444338635500e-10

軌道暦メッセージ (OEM)

OEMは、オペレーターとKayhan Spaceとの間で、宇宙機の軌道要素および共分散行列のデータを送信するために使用される、重要なメッセージフォーマットです。OEMファイル形式のデータには、入力の際のいくつかの必須事項があります。その一部を以下に示します:

  • 天体暦データの項目の順序は、以下の順序でないといけない
    • Epoch, X, Y, Z, X_DOT, Y_DOT, Z_DOT, X_DDOT, Y_DDOT, Z_DDOT
  • 上記のデータセットは1行に収めなければならない
  • エポック、位置・速度ベクトルの各項は必須

その他の必須事項については、こちらからCCSDS刊行のブルーブックを参照してください。

OEM形式の例
CCSDS_OEM_VERS      = 2.0
CREATION_DATE = 2020-12-15T15:38:49.225
ORIGINATOR = NONE

META_START
OBJECT_NAME = CLOUDSAT
OBJECT_ID = 29107
CENTER_NAME = Earth
REF_FRAME = EME2000
TIME_SYSTEM = UTC
START_TIME = 2020-12-15T00:00:00.000
STOP_TIME = 2020-12-15T00:04:00.000
META_STOP

2020-12-15T00:00:00.000 3122.64037649000011 -4990.45786587000021 -3916.75557478000019 1.08772865495000 -4.14753007890000 6.15926256354000
2020-12-15T00:01:00.000 3181.52799254999991 -5229.02201325999977 -3539.48705998000059 0.87451084064000 -3.80189141424000 6.41211163702000
2020-12-15T00:02:00.000 3227.50864269000022 -5446.37293529999988 -3147.82158600999992 0.65764187955000 -3.44066000995000 6.63899379231000

COVARIANCE_START
EPOCH = 2020-12-15T00:00:00.000
COV_REF_FRAME = EME2000
3.11125239948540e-08
3.05332100221654e-09 4.22065366331391e-08
1.91488347500367e-08 -5.05183479388049e-08 8.91260119830244e-08
5.65158667231038e-12 3.05586865373066e-12 1.61288598580544e-12 2.39916702388562e-14
1.13672778417593e-12 2.55641104334951e-12 -9.39613111482829e-12 1.18293576687324e-14 1.41470877634445e-14
-5.76533288642128e-13 -2.65562940015304e-12 1.38692146152402e-11 4.72034064496763e-15 -2.83818383008073e-15 1.25133123791297e-14
EPOCH = 2020-12-15T00:01:00.000
COV_REF_FRAME = EME2000
3.17567176799718e-08
3.32437419051862e-09 4.24057768646188e-08
1.91358863774219e-08 -5.10240180121485e-08 9.04928802437245e-08
5.09608271785789e-12 3.34234474413842e-12 3.71350156780421e-13 2.36439520499879e-14
1.39741458103510e-12 8.56000885512545e-13 -5.74866253871860e-12 1.17013068858110e-14 1.35380301573490e-14
-1.77944970619585e-12 9.03094967529518e-13 8.77991679278633e-12 4.07353345582921e-15 -1.38990652946612e-15 1.25034523391769e-14
EPOCH = 2020-12-15T00:02:00.000
COV_REF_FRAME = EME2000
3.23377139987704e-08
3.60952934619480e-09 4.24350696250564e-08
1.89883124250752e-08 -5.11082343791222e-08 9.12051148059243e-08
4.60062575658043e-12 3.23303249118139e-12 -3.17881697153523e-13 2.33977779287646e-14
1.42059764281136e-12 -2.58588468684403e-13 -2.96254208827873e-12 1.14467327808721e-14 1.33822633582683e-14
-3.11806273559220e-12 4.91398479111300e-12 2.99370043747734e-12 3.55167640830622e-15 -2.50437747093092e-16 1.30925227856410e-14
COVARIANCE_STOP

その他の軌道形式

Kayhan Satcat Launch打ち上げ時接近評価 (LCA) サービスであり、18thSpace Defense Squadron(18 SDS)が刊行する、LCA運用ハンドブックに基づいています。

Space-Track.orgからLaunch Conjunction Assessment Handbookをダウンロード

CALIPER V2.0

CALIPER Trajectory Covariance V2.0は、打ち上げプロバイダーが打ち上げロケットのステージ軌道と共分散行列を18/19 SDSに送信するために使用する、特定の形式です。この形式は、18/19 SDSが自身のSuperCOMBO/CALIPERシステムで使用するために定義したものです。

CALIPER V2.0 形式の例
CALIPER EPHEMERIS V2.0 COVARIANCE UVW (or PTW)
LAUNCH TIME: yyyy ddd hhmm ss.sss...
TimeSinceLaunchInSeconds X Y Z Vx Vy Vz
PosCov(1,1) PosCov(2,1) PosCov(2,2)
PosCov(3,1) PosCov(3,2) PosCov(3,3)

Satcatデータ入力フォーム

Satcatの各サービスでは、状態ベクトルやTLEなどの軌道データを手動で入力することができます。

TLE 手動入力

TLEはSGP4解析的伝播法に使用されます。TLEは精度が低いため(位置の不確実性が1日あたり約1km増加)、運用中の宇宙飛行の安全性を保つには推奨していません。

データフィールド説明
厳密な検証TLE データの厳密な検証を有効または無効にする
TLEデータ有効なTLE形式の文字列を入力する(形式の例は以下を参照)
識別情報任意で、宇宙機の NORAD ID および/または Common Name を入力する

TLE形式の仕様

以下は3行形式のTLEの例で、ヘッダーには宇宙機の Common Name が表示されます。

ISS (ZARYA)
1 25544U 98067A 04236.56031392 .00020137 00000-0 16538-3 0 9993
2 25544 51.6335 344.7760 0007976 126.2523 325.9359 15.70406856328906

Space-Track.orgで TLE形式の仕様を参照する


状態ベクトルの手動入力

状態ベクトルは、ある瞬間の宇宙機の位置・速度を示したもので、通常は軌道決定を行う際に導出されます。

データフィールド説明
識別情報任意で、宇宙機の NORAD ID および/または Common Name を入力する
位置に関する状態ベクトル位置の3つの成分をカンマで区切り、それぞれの単位を入力
速度に関する状態ベクトル速度の3つの成分をカンマ区切り、それぞれの単位を入力
宇宙機のプロパティオブジェクトを入力

宇宙機のプロパティ

衝突リスク評価と天体暦伝播を正確に計算するために、宇宙機のプロパティ値を入力します。

プロパティ単位必須
質量$kg$必須ではない
プライマリ物体とセカンダリ物体の半径の和 (HBR)$m$必須
SRP(太陽放射圧)面積
反射係数
$m^2$
--
必須ではない
抗力面積
抗力係数
$m^2$
--
必須ではない

共分散行列データの入力

任意で、宇宙機の状態をより詳細に伝えるために、共分散行列の値を入力することができます。適切な参照フレームと単位を選択し、行列が下三角行列として入力されたか、完全なNxNの行列として入力されたかを選択することで入力できます。

詳しくは Satcatで対応している基準座標系 を参照